年末からMark Carneyの”Values: Building a Better World for All”の原著(邦訳なし)を入手し、読んでいます。
“Value”すなわち、「価値」が古代から現代に向かってどのように変遷してきたかを様々な角度から論じている骨太の本です。また、”Building a Better World for All”とあるように人類にとって未来の社会が素敵なものになるように、金融システムなどのあり方も論じた内容となっています。
この本の著者であるMark Carneyはイングランド銀行総裁を辞めた後、United Nations Special Envoy for Climate Action and Finance, United Nationsに就任しており、気候変動と金融の国際連合機関でトップを勤めています。COP26でも重要な役割を果たしたそうです。
本の流れですが、ざっくりとしては、昨今の資本主義の行き詰まりから、今後の金融システム変更に言及しています。その際に、今までのようにお金で決められていた価値基準から、次のパラダイムが必要であることを述べています。
ここで注目すべき点として、最近なって声高に叫ばれているSDGs(持続可能な開発目標)が挙げられます。
SDGsは以下の画像にあるようにカーボンニュートラルや人権など17項目に渡って「持続可能な社会」のために必要なトピックに取り組んでいく世界的な合意です。
上記17項目の邦訳は以下となります。
1.貧困をなくそう
あらゆる場所で、あらゆる形態の貧困に終止符を打つ
2.飢餓をゼロ
飢餓に終止符を打ち、食料の安定確保と栄養状態の改善を達成するとともに、持続可能な農業を推進する
3.すべての人に健康と福祉を
あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を推進する
4.質の高い教育をみんなに
すべての人々に包摂的かつ公平で質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する
5.ジェンダー平等を実現しよう
ジェンダーの平等を達成し、すべての女性と女児のエンパワーメントを図る
6.安全な水とトイレを世界中に
すべての人に水と衛生へのアクセスと持続可能な管理を確保する
7.エネルギーをみんなに そしてクリーンに
すべての人々に手ごろで信頼でき、持続可能かつ近代的なエネルギーへのアクセスを確保する
8.働きがいも経済成長も
すべての人のための持続的、包摂的かつ持続可能な経済成長、生産的な完全雇用およびディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を推進する
9.産業と技術革新の基盤をつくろう
強靭なインフラを整備し、包摂的で持続可能な産業化を推進するとともに、技術革新の拡大を図る
10.人や国の不平等をなくそう
国内および国家間の格差を是正する
11.住み続けられるまちづくりを
都市と人間の居住地を包摂的、安全、強靭かつ持続可能にする
12.つくる責任 つかう責任
持続可能な消費と生産のパターンを確保する
13.気候変動に具体的な対策を
気候変動とその影響に立ち向かうため、緊急対策を取る
14.海の豊かさを守ろう
海洋と海洋資源を持続可能な開発に向けて保全し、持続可能な形で利用する
15.陸の豊かさも守ろう
陸上生態系の保護、回復および持続可能な利用の推進、森林の持続可能な管理、砂漠化への対処、土地劣化の阻止および逆転、ならびに生物多様性損失の阻止を図る
16.平和と公正をすべての人に
持続可能な開発に向けて平和で包摂的な社会を推進し、すべての人に司法へのアクセスを提供するとともに、あらゆるレベルにおいて効果的で責任ある包摂的な制度を構築する
17.パートナーシップで目標を達成しよう
持続可能な開発に向けて実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する
私は、これらがAIと密接に関わってくると考えています。例えば、3の「健康福祉」にはメドテックが、4の「教育」には個人にカスタマイズされたエドテック、5の「ジェンダー平等」や16の「平和と公正」はSNSや広告などのマスメディアへの印象を方向づける言語&画像生成など、要素技術にAIが大きく貢献できると考えられるからです。
今後のブログでは、本の内容にさらに詳しく触れるとともに、これからの世界の展開を考えてみたいと思います。