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Values 価値とは (1)

Mark Carneyの著作Values: Building a Better World for All”において、価値の原点から話が始まり、現代に流通している通貨に関して中央銀行との関係を絡めて話が展開されます。特に感情やSNSをターゲットに認知科学、言語心理学にも足をかけて研究してきた身として、人間にとっての価値のあり方が大変興味深かったので、この”The future of money”の節を紹介してみようと思います。

お金の未来 THE NATURE OF MONEY ALWAYS EVOLVES

過去の金融史を振り返り、問題点を克服するための存在としての中央銀行(主にイングランド銀行が出てきます)に言及しています。
そして、急速に社会に浸透しつつあるフィンテックと、通貨の安定に寄与してきた中央銀行の関係についてまず述べています。

It would be hubris to think that the current model of independent central banks represents the end of monetary history.

現在の独立した中央銀行のモデルが金融の歴史の終わりを意味する
と考えるのは思い上がりです。

とした上で、

… Into this tradition of change comes the fintech revolution in money and payments. It is being driven by several factors.

…このような変化の伝統の中で、お金と決済におけるフィンテック革命が起きています。それはいくつかの要因によって推進されています。

次に最近の社会性と価値について論じています。

First, money is changing in response to the fundamentally transformative technical innovations, such as advances in cryptography and artificial intelligence, as well as the powerful network effects in social media. After all, if ‘likes’ are the social currency of this generation, could they be the economic currency of the next?

第一に、暗号や人工知能の進歩など、根本的に変化する技術革新や、ソーシャルメディアにおける強力なネットワーク効果に対応して、お金が変化しています。結局のところ、「いいね!」が今の世代の社会的な通貨であるならば、次の世代の経済的な通貨になり得るのでしょうか?

More fundamentally, monetary innovations are responses to the broader reorganisation of the economy and society into a series of distributed peer-to-peer connections across powerful networks. People are increasingly forming connections directly, instantaneously and openly, and this is revolutionising how they consume, work and communicate. Yet the financial system continues to be arranged around a series of hubs and spokes like banks and payments, clearing and settlement systems. Even if the current generation of money-like substitutes, such as cryptocurrencies and stablecoins, are not the answer, they are throwing down the gauntlet to the existing payment systems, which now need to evolve to meet the demands of fully reliable, real-time, distributed transactions. Public authorities need to create the right environment to support such private dynamism.

より基本的には、通貨のイノベーションは、経済や社会がより広範に再編成され、強力なネットワークを介して分散したピアツーピアのつながりへと変化していることへの対応です。人々は直接、瞬時に、そしてオープンにつながりを持つようになり、消費、仕事、コミュニケーションの方法に革命をもたらしています。

しかし、金融システムは、銀行や決済システムのようなハブとスポークを中心に構成されています。暗号通貨やステーブルコインのような現在の貨幣のような代替物がその答えではないとしても、それらは既存の決済システムに挑戦しており、完全に信頼できるリアルタイムの分散型取引の要求に応えるために進化する必要があります。公的機関は、このような民間のダイナミズムをサポートするための適切な環境を整える必要があります。

つまり、分散システムで取引が可能、かつ今の金融システムよりもオープンなシステムを模索していることがわかります。また、SNSにおける「いいね!」に関しても、社会的な通貨として言及があり、ピアツーピアのネットワークの価値が鋭く考察されています。
私が過去に行ったキャッチコピー研究では、ユーザーの嗜好性の指標である「いいね!」をSNS記事から予測していました。また、その過去の研究のイントロで引用した論文は、「いいね!」を押すターゲットからその人のプライベートな特徴、属性、信条などがわかるというものでした。
フィンテックに加えて、これらのソーシャルメディアの興隆からわかることは、マスが溶けてなくなり、YouTuberを始めとする嗜好性を中心とするようなネットワークが更に価値を持つという昨今の世界を鑑みたときに、個々人の経済的な価値観もこれに追従し、アップグレードされる可能性があるということなのではないでしょうか。

私が思うに、20世紀の物質的な世界観を乗り越える形で、21世紀は感情、共感を含んだ心の世紀になると考えます。そのような意味で、今までお金の価値の源泉であった中央銀行のスタンスが大幅に変わってくる可能性があるということは、例えば貯蓄を是とするような我々の経済的な価値観自体も大きく転回することがあり得るということだと思います。

また、本を読み進めて興味深い場所があれば共有したいと思います。